ポール・スミザーさんのガーデニングは
いかにその地に自然な植物を根付かせるか
ということだと感じました
「砂地を緑化したい」という場所に湿地の植物を持ってきても意味がない
土壌改良や一生飲み続けなければいけない薬のような
世話の必要な植物ではいけないのです
多くのガーデナーの根本は同じ気持ちだと思います
コンテストで賞をとりたいとか、目を惹いて強い評価を得たいとか
プラスαの部分で、つい自然のルール違反をしてしまうだけだと思います
西畠清順さんの番組を見ました
思ったことが二つ
一つ目は:
植物にはヒトの野生を目覚めさせるちからがある、ということ
彼がボルネオで世界最大の食虫植物を見て衝撃を受けたように
彼が世界中から探してくる強いインパクトのある植物を
たくさんのひとびとに紹介することで
「生きる喜び=野生」を覚えるきっかけを作りたいと願います
彼が関わっている東京大崎の都市計画の緑化事業で
シンボルになるのはスペインから取り寄せたオリーブの古木
そして木々の多くは果樹
実のなるイチョウは問題がある、せめて奥の一本だけにしないか
と抵抗が上がります
一見、ポール・スミザーのやり方と正反対のような印象があります
(事実彼の著作『プラントハンター』は「珍品コレクターの活動日記」と評されてもいます)
番組で取り上げられていた
パラボラッチョ
彼はこの木を多くの人に見てもらえる機会を作るけれど
この木のための温室でちゃんと育てることが基本になっています
私は「お取り寄せ」をせず、その地で巡り会ったらヨロシと思う派ですが
この木を知ったことがきっかけで植物に目覚めたり世界に出る後押しになったり
することは素晴らしいことだと思う
彼の仕事がきっかけで世の中がもっと本当の緑に包まれるのなら
最高だと思う
余談ですが
パラボラッチョのように下ぶくれの木はいろいろあります
挿し木で増やせるものもあります
が
これはトックリラン
多くの場合実生でないと下ぶくれにならないのです
「幸福の木」と呼ばれたドラセナが流行した時期がありましたが
あれは切り口に防腐剤を塗られた丸太を挿すだけで
簡単に葉がにょきにょき出て来ます
・
もう一つは生け花のこと
池坊を子供の頃と大人になってからの2度に渡って学んびました
とくに生花(しょうか)は大好きだけれど、同時に思うことがあります
生花店に並ぶ花は輸送の便を考えて規格にのっとって栽培された
お行儀の良い花木が多いです(野菜と同じ)
生花(しょうか)には基本のラインがあって
植物の表裏(表=南向きに育った面)を整えてラインにふさわしい枝を選んで
生けるのだけれど、花はみんなお行儀がよいのです
お行儀がよすぎるので、理想のラインにあわせて木を矯める(曲げる)ことになります
子供の頃、生花(しょうか)のはじめは毎回矯めやすい柳5本ばかり使っていました
私が子供の頃のお花の教室はみんなそうだったよね
盛り花を2年、その後生花(しょうか)に取り組むけれど最初は
赤目柳かハランばかりだったと思う
今は違うみたい
このような図録が描かれた頃は
植物はいろいろな枝ぶりをしていたと思います
大人になってからの教室では基本から一歩出たバリエーションを生けることが多くなりました
例えば、右の絵の左の半分くらいの枝
副(そえ)の枝がもっとぐいっと奥に下がってるとか
そういう枝が都合よくあるわけではないので
山茱萸(サンシュユ)のように折り矯め(バキっとなっても折れずに強い矯めが可能)
できる素材を使って理想のラインを作ったりしました
でもそれって本末転倒
山の木を切って生けるからこそのバリエーション
現代の生け花は難しいよなぁ
と思っていました
西畠清順さんの家業は5代続いた花問屋
京都の家元の華展の材料を山に切りに行くこともあります
潮風にさらされて曲がりくねった松
存在感たっぷりの野生をたたえた枝ものを揃えて
華道家に挑戦する
ああ、こういう問屋さんがいるんだなぁ
と、感動しました
そして、彼がまだ34歳ということはすごい希望です
・・・・・
華についてもう一つ
少し前に京都の老舗旅館「俵屋」さんの番組を見ました
秋の紅葉を生け込んでいたときに女将さんが
大胆に枝を落として
「風が見えるように」といったことを指導していました
残念ながら秋の写真は見つかりませんでした(^^;
フラワーアレンジにはいくつかの潮流があって
花屋も職人(マイスター)として技術が必要とされるドイツ
豊富な花材を扱うオランダ
今はそれらの上に芸術的なセンスと緻密な職人技をさりげなく駆使して
デザイナーがオリジナリティを出しています
が、ヨーロッパの花の源は
邸宅を飾る女性のたしなみとして発展したイギリス流が基礎になっています
そしてそれらの根底には日本の生け花があります
オランダやフランスのアレンジが花で埋め尽くすタイプが多いのに対して
イギリス伝統のアレンジには日本の立花を見るような立体感があります
イギリスで勉強をしていたときに
先生がよく仰っていました
「蝶が舞える?」
俵屋さんの「風」を聞いたときにそれを思い出しました
しかし・・・俵屋さんに一生に一度くらいは泊まってみたいものです
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